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東京高等裁判所 平成元年(ラ)293号 決定

抗告人 三木久美子 外2名

相手方 吉田明子 外3名

主文

原審の平成元年3月28日付審判を取り消す。

原審の平成元年2月21日付審判の主文第2項を次のとおり変更する。

抗告人三木久美子は、相手方吉田明子に対し7500万円、同博子に対し1億3125万円、抗告人小林典子及び同勝田公子に対し各4375万円並びに右各金員に対する本決定確定の日から支払ずみまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。

理由

一  本件各抗告の趣旨及び理由は、別紙即時抗告申立書(編略)及び「抗告」書(編略)記載のとおりである。

二  当裁判所の判断は次のとおりである。

1  職権により原審の平成元年3月28日付審判(以下「更正審判」という。)について考えてみると、遺産分割申立事件に係る審判においては、対立する複数の当事者間の実体的法律関係について審理判断が行われ、その確定が図られるのであり、いつたん審判がされた以上、その内容を浮動状態におくことは、一般的関係においても、当事者の利害関係においても望ましいことではないから、家事審判法7条、非訟事件手続法25条による民事訴訟法417条1項の準用には親しまないと解するのが相当である。よつて、原審の平成元年2月21日付審判(以下「原審判」という。)につき再度の考案により更正した更正審判は不適法であるから、これを取り消すべきである。

2  本件についての当裁判所の判断及び理由説示は、次のとおり付加、訂正するほか、原審判の理由説示と同一であるから、これを引用する。

(一)  原審判2枚目裏1行目の「本件審理の結果」を「一件記録」と、同3枚目表9行目及び同裏5行目の各「あて」を「ずつ」と改める。

(二)  同4枚目表13行目の「あて」を「ずつ」と、同裏4行目の「(3)」を「(4)」とそれぞれ改め、3行目の次に行を改めて次のとおり加える。

「(3)相手方明子は、ヨネからその婚姻の際、生計の資本として現住所の土地建物の贈与を受けており、ヨネの紀三郎からの相続分に対する自己の相続分を放棄した。

なお、抗告人典子及び同公子は、相手方明子及び忠明について特別受益とみるべき給付があつた旨主張し、忠明が私立の歯科医大を卒業したことが認められるが、その学費等についてこれを明らかにする客観的資料はなく、紀三郎の職業経歴の点からみても、二男である忠明のみを格別に優遇したとは認め難いし、相手方明子についても、前示のほか紀三郎から贈与を受けたと認めるべき資料はないから、右抗告人らの主張は採用できない。」

(三)  同7行目の末尾に「なお、抗告人久美子は、右評価が不当であると主張するが、右鑑定の結果については、その資料の採取、これに基づく評価方法について格別不当とすべき点は見受けられず、他にこれを不当とすべき資料は存しないから、右抗告人の主張は採用できない。」を加える。

(四)  同9行目の「申立人」の前に「前示のほか、」を、11行目の「見出し難い。」の次に次のとおりそれぞれ加える。

「相手方明子に対する前記贈与は、その特別受益とみるべきであるから、ヨネの遺産としてのいわゆるみなし相続財産は、ヨネの紀三郎に対する相続分と右土地建物となるが、相手方明子は右相続分を放棄しているから、同相手方の特別受益がヨネの遺産に対する相続分に達しないときも、またこれを超えるときも、ヨネの紀三郎に対する相続分についてみる限り、同相手方の相続分はなく、右ヨネの相続分については、同相手方を除くその余の相続人において分割すれば足りる。

したがつて、ヨネの死亡に伴う相続により、相手方明子の相続分は18分の4、豊及び忠明のそれは各18分の7となり、本件遺産分割における相続人の具体的相続分は、相手方明子18分の4(216分の48)、同博子72分の14(216分の42)、同峰子及び同忠夫各216分の21、各抗告人54分の7(216分の28)となる。」

(五) 同5枚目裏末行の「従前から」の次に「被相続人、相続人らの明示ないし黙示の合意により、豊を経て」を加え、同6枚目表2行目の「認められる」から6行目の「しかして」までを、「認められ、同抗告人が一種の権利類似の居住利益を保有するものというべきであり、調整金の算定にあたつてはこれを斟酌し、」と、9行目の「30パーセント」を「10パーセント」と、13行目の「0.7」を「0.9」と、「2億6250万」を「3億3775万」と、同裏2行目を「3億3750万円×48/216 = 7500万円」と、4行目を「3億3750万円×42/216 = 6562万5000円」と、6行目を「各3億3750万円×21/216 = 3281万2500円」と、8行目を「各3億3750万円×18/216 = 4375万円」と、12行目の「36分の3」を「216分の21」と、同7枚目表1行目及び2行目の各「4375万円」を「6562万5000円」と、2行目の「8750万」を「1億3125万」と、4行目の「0」を「零」と、5行目の「及び」を「に対し7500万円」と、6行目の「各8750万円あて」を「1億3125万円」と、7行目の「2916万6666円あて」を「4375万円ずつ」と、12行目の「本件審判」を「本決定」と、同裏12行目の各「あて」を「ずつ」とそれぞれ改める。

三  以上の次第により、更生審判を取り消し、右説示と趣旨を異にする原審判を右のとおり変更し、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 丹野達 裁判官 加茂紀久男 新城雅夫)

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